腸免疫が健康の決め手! 健康

【獣医師監修】今日から始めたいペットの「腸活」

ワンちゃん、猫ちゃんが食べた物を消化吸収する腸には、「全身の免疫を司る」という重要な役割があることがわかってきました。
ワンちゃんや猫ちゃんの「腸内細菌」を食事などにより活発化させると、全身の免疫細胞の戦闘能力が高まり、病気の予防などにもつながるといわれています。
「善玉菌を増やして腸内環境を整え、健康な体をつくる」腸活を、ワンちゃんや猫ちゃんも始めてみましょう。
今回はワンちゃん、猫ちゃんの腸活について、キャフェリエの小林充子院長に伺いました。

小林充子先生

獣医師、CaFelier(東京都目黒区)院長。麻布大学獣医学部在学中、国立保険医療科学院(旧国立公衆衛生院)のウイルス研究室でSRSV(小型球形ウイルス)の研究を行なう。2002年獣医師免許取得後、動物病院勤務、ASC(アニマルスペシャリストセンター:皮膚科2次診療施設)研修を経て、2010年に目黒区駒場にクリニック・トリミング・ペットホテル・ショップの複合施設であるCaFelierを開業。地域のホームドクターとして統合診療を行う。

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活発化させたほうがいい腸内細菌は乳酸菌やビフィズス菌

ワンちゃん、猫ちゃんの腸には、1000種類以上、数にして数百兆個もの腸内細菌が棲みついています。
これらの腸内細菌はワンちゃんや猫ちゃんが食べたものをエサにして、互いに競い合い、助け合いながら生きる一種の生態系を作っています。
この腸内細菌の生態系を、「腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう:腸内フローラ)」と呼びます。

腸内フローラの中に存在するのが「腸管免疫」です。
腸管免疫は免疫細胞の数が多く、外部から体内に侵入する細菌に対しては抗体を生み出して防御しますが、食品のような安全なものには免疫抑制機能が働き、アレルギーなどの過剰な反応を防いで栄養を摂り入れるというすぐれた特徴があることがわかってきています。
「善玉菌」と呼ばれる乳酸菌(乳酸桿菌)やビフィズス菌を増やして、腸に密集する免疫細胞の力を高め、悪玉菌を圧倒する体をつくることは、ワンちゃん、猫ちゃんの生涯の健康につながります。

逆に、「悪玉菌」と呼ばれるウェルシュ菌や病原性大腸菌、黄色ブドウ球菌などの腸内細菌が増えすぎると、食欲が低下したり、栄養の吸収率が落ちたりして体重が増えない、毛づやが悪い、アレルギーなどの皮膚症状や炎症性腸疾患の発生など様々な体調不良の原因となります。
幼少期から善玉菌を増やして腸内環境を整え、健康な体をつくる「腸活」をして、免疫細胞の力を高めましょう。

「腸活」は食生活とストレスのない環境が基本です

善玉菌を増やす腸活は、乳酸菌やビフィズス菌、そのエサとなるオリゴ糖や食物繊維を多く含むフードを与えるのが基本となります。
また、乳酸菌やビフィズス菌を含むサプリを、かかりつけの獣医師と相談のうえで与えるのもおすすめです。
また、ストレスは悪玉菌を増やす原因となりますので、一緒に遊んだり、ワンちゃんの場合は散歩へ行ったりするなどしてストレスのない生活を送らせてあげることも重要です。
また、腸活は、幼少期、成年期、シニア期と成長ごとに気づかうポイントが変わってきます。ここでは、ワンちゃん、猫ちゃんの成長段階に応じた腸活をご紹介します。

なお、乳酸菌やビフィズス菌には、そこから派生するさまざまな「株」があります。
例えば、ヤクルトで有名な「乳酸菌 シロタ株」は、乳酸菌から派生する株の一種です。
猫ちゃんはワンちゃんよりも摂取するタンパク質の量が多いので、腸に根付いている乳酸菌やビフィズス菌などの株が厳密にいうとワンちゃんとは異なりますが、これら善玉菌を増やしていく腸活が健康につながる点では同じです。

ワンちゃん・猫ちゃんの「幼少期」こそ腸活が重要です

子犬や子猫は、生後すぐに飲むお母さんの「初乳」などから母体の免疫や、免疫グロブリンという抗体を受け継ぎ、病原菌などから身を守ります。成長するにつれて自分の体内でも免疫をつくれるようになり、生後5~6カ月くらいで母体から受け継いだ免疫と体内でつくった免疫が完全に入れ替わります。 この入れ替わるタイミングで、善玉菌である乳酸菌やビフィズス菌を補うのがその後の健康にとって重要です。ここで、善玉菌が減ってしまうと、食欲不振や湿疹などの皮膚疾患、お腹を壊すなどの不調があらわれることがあります。 「あまり食べないから体重が増えない」ワンちゃん、猫ちゃんの場合、フードやサプリでしっかり腸活をしておくと免疫力が高まるうえ、栄養の吸収率が上がってしっかりした体をつくることができます。免疫力を高めておけば、少し体調が悪くなっても自分の力で治せます。ワンちゃん、猫ちゃんの一生の健康が幼少期の腸活にかかってくると言っても過言ではありません。

成年期は環境の変化に対応できる腸をつくっていきます

成年期になると、

など、「変化」に腸が対応しきれないケースが見られます。
また、腸内のPHが上下し、アルカリ性になったり、酸性になったりと不安定になることがあります。
基本的に腸内は酸性のほうがよいので、腸内のPHを酸性寄りに安定させるために腸活が必要となります。

また、成年期はアレルギーなどの皮膚症状があらわれることがあります。
腸管免疫を高めておけば、食べ物として体内に入ってきたものに対して、体が防御反応=アレルギーを起こしてしまうことが少なくなります。

口腔環境が悪化しがちなシニア期も腸活が大切です

加齢により、ワンちゃん、猫ちゃんの腸内からは善玉菌が減っていきます。
腸活により、善玉菌が減る速度を遅くしていくことが大切です。

また、体力や免疫力が落ちてくるので、腸活によって腸管免疫を底上げしていくことが重要です。
シニア期からは腫瘍も多くなってきますが、腸管免疫は腫瘍細胞と戦うための重要な戦力となります。
腸活を毎日コツコツと行っていくことで、老化を遅らせ、病気と闘う体づくりをしていきましょう。

また、シニア期は歯周病などで、口の中の環境(口腔環境)が悪化します。
口腔内にも独特の細菌叢があり、腸内と同じように善玉菌と悪玉菌が存在します。
そして、歯周病がひどくなると悪玉菌の種類、数が激増します。
その細菌は、主に食事のタイミングでフードなどとともに消化器官に入ってきます。
このとき、腸内環境が整っていないと口腔内から流れてきた悪玉菌が原因で、小腸などの上部消化管にダメージが加わる場合があります。
腸活を行うことで、体内に入ってくる細菌と戦うための力を蓄えておきましょう。

ウンチでチェック!腸内細菌

腸活が行われ、腸内環境が整っているワンちゃんや猫ちゃんのウンチは、バナナのようなウンチです。
固すぎず、柔らかすぎずベタつかないので、トイレシートや猫砂などから拾うと「ウンチをした」ということがわかる程度の跡しかつきません。
また、ツヤがあってニオイも少ないです。腸活をしながら、ウンチもチェックするようにしましょう。

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