シャンプー・お手入れ

【トレーナー&トリマー監修】入浴前にしておくとよりスムーズな「お風呂のトレーニング」

1日の疲れを洗い流してくれるお風呂は、人はもちろん、犬にとっても気持ちいいもの。特に、炭酸などが入っている犬用の入浴剤を使ったお風呂に入れば、毛穴の汚れが取れるうえじっくりと温まることができます。今回は、犬のお風呂の効能と、入浴前にしておくとよりスムーズなお風呂のトレーニングについてドッグリーの荒井隆嘉校長に伺いました。

荒井隆嘉先生

DOGLY校長。20年以上のキャリアをもち、飼い主様とワンちゃんが楽しく暮らし、地域の一員となれるよう日々尽力する。犬雑誌のしつけ特集に協力するだけではなく、ドッグトレーナー物語「愛犬しつけ教室プラスわん!」(小学館)監修や、ワンちゃんが出演するテレビ番組の監修などを幅広く手がける。東京都動物愛護推進員、台東区保健所子犬のしつけ教室講師を務めるなど、動物の愛護と適正飼養の普及啓発にも力を入れている。愛犬はチワワのしじみちゃん。今回は、お風呂に慣らすしつけをご指導いただきました。

トリマー 野口香織さん

DOGLY専属トリマー。犬の気持ちを考えたやさしいシャンプー&トリミングと、飼い主様の要望通りに仕上げてくれるテクニックに定評があります。今回は、ワンちゃんに負担をかけないお風呂の入れ方を教えていただきました。

Index

早速、ワンちゃんをお風呂に入れてみました!

まず、市販されているワンちゃん用の入浴剤をお湯に入れて、飼い主様が手でお湯をすくって体に少しずつかけてあげるとよいでしょう。
気を付けたいのは室温管理です。夏は熱中症、冬は体が濡れることによって風邪を引かないよう気を付けなければなりません。
夏と冬では、快適と思う室温が変わってきます。主な要因は、外気温との温度差です。例えば、冬に室温25℃だとやや暑く感じますが、逆に夏に室温20℃だと寒く感じます。
オススメは、夏は室温24~25℃、冬は室温21~22℃程度に設定することです。冬は風邪を引かせてはいけないと、部屋を暖めすぎてもよくありません。
室温を設定したら、お風呂やたらいなど、ワンちゃんの体がすっぽり収まるサイズのものに、足が浸かる程度のお湯を張ります。体全体ではなく、足の付け根くらいまでが浸かる程度の高さにしてください。
お湯の温度は、35~40℃程度です。夏はぬるめの35℃、冬は暖かめの40℃程度がオススメです。

ここでは、チワワのしじみちゃんにモデルになっていただきました。チワワは寒がりなので、暖かめの温度設定にしましょう。

ここで、ワンちゃんの様子に気を付けてください。口が開いていたら、暑いということです。お水をあげて、室温を少し下げてみてください。
室温がワンちゃんにとって快適だと、口を閉じます。
すごく寒いと感じると、ワンちゃんは丸まります。その場合は、室温を少し上げてください。
震えは、緊張からくることが多いです。震えているからといって、寒いとは限りません。
ぶるぶると震えてハアハアしているときは、暑いわけではないけれど、緊張しているという場合もあります。
お風呂に入れたあとワンちゃんに触り、だら~っと脱力していて口を閉じていたら、室温もお湯の温度も快適だということです。これを目安に、最適な室温と湯温を探してみてください。
まずは入浴剤を入れずに、お湯に慣らします。

手でお湯をすくい、背中のあたりに少しずつかけてあげます。受け入れてくれたらいいこ!と声をかけて、おやつをあげます。

では、お風呂に入浴剤を入れてみましょう。

お風呂に入浴剤を入れました。このときも、お風呂のお湯の高さは、足の付け根まで浸かる程度にしてください。

入浴剤は、炭酸が入っているタイプがオススメです。DOGLYで行っているトリミングには、「タラソテラピー」のサービスがあります。これは、海藻や海泥などで毛穴の汚れをキレイにするといわれています。気持ちいいので、うたたねしてしまうワンちゃんもいるほどです。炭酸もとても気持ちよく、毛づやもよくなり、ドライヤーによる毛の乾きがはやくなるものもあります。
入浴剤を入れたお風呂のみでもいいですし、入浴後、毛穴が開いてからシャンプーなどをすると、洗浄効果が高まると言われています。1カ月に1回など、定期的に入浴剤入りのお風呂に入れる場合は、お風呂のみでも十分、ワンちゃんの体はきれいになります。

入浴剤入りのお風呂に、ワンちゃんを浸からせてあげます。お湯の高さはこのくらいの、足の付け根まで浸かる程度にしましょう。全身が浸かってしまうと、溺れてしまうという恐怖心を抱いてしまう恐れがあります。

ワンちゃんが入浴剤入りのお風呂を受け入れてくれたら、少しずつ手でお湯をすくってかけてあげましょう。

敏感な頭には、ほんの少量、お湯を手ですくってかけて慣れさせていきます。

頭からお湯をかける、シャワーをかける、ドライヤーの風をあてるなど、ワンちゃんが特に苦手なことを受け入れたときは、とびきりお気に入りのおやつをあげていい子!とほめてください。

お湯を揉み込むようにマッサージしてあげると、ワンちゃんも喜んでくれます。

お風呂の後でシャンプーをした場合は、シャワーで洗い流してください。シャワーは、水流を弱めに、水温設定は35~39℃程度(人がちょっとぬるいと感じる程度)にしましょう。シャワーをワンちゃんの体から離さず、体にぴったりとくっつけて洗い流します。

頭頂部を洗い流すときも、シャワーはぴったりとくっつけてあげるようにしましょう。

体を洗い終わったら、タオルドライをします。ゴシゴシこすらず、体を包み込んで優しくポンポンするようにして体の水分を拭き取ります。しっかりタオルドライをすると、ドライヤーをかける時間が短くできてワンちゃんの負担が少なくなります。

足は特に水分を拭き取りにくいので、お手をさせるように足先を飼い主様の手の上にのせて拭いてあげるのがオススメです。

入浴時間ですが、7歳以上の場合は濡れることで体力が落ちてしまうので、なるべく短く切り上げたいところです。7分くらいでここまでを終えることが理想です。手早く入浴を終えられるという意味でも、シャンプーではなく、入浴剤入りのお風呂にさっと入れたほうがいいでしょう。
7歳未満の場合は、その子によって体力が違うので、ワンちゃんの様子を見ながら入浴時間を調整してください。10分以内にここまでを終えられるのが理想です。

入浴後は、おやつをあげながらほめてください。もっとお風呂が好きになります。

ワンちゃんにおやつをあげて気を引きながら、ドライヤーの温風をかけながら体を乾いたタオルで拭きます。ふたり一組になり、一方がおやつをあげて、一方がドライヤーをあててあげるのが理想です。難しい場合は、市販のトリミングテーブルなどの導入もオススメです。その場合は、ワンちゃんの落下事故を避けるため、リードをトリミングテーブルのフックにかけて固定するようにしてください。また、トリミングテーブルから離れないようにしましょう。

体が完全に乾いたら、ブラシで仕上げをして完成です!

お風呂は、ワンちゃんの体をキレイにしてくれるだけではなく、ワンちゃんと飼い主様とのコミュニケーションにもなります。また、全身をくまなく触ってあげることで、皮膚のトラブルなどに気付きやすいです。
ぜひ、ワンちゃんとの生活に、お風呂を取り入れてみてくださいね。

お水が苦手な場合は、少しずつトレーニングをしていきましょう。

DOGLYではトリミングも行っておりますが、やっぱり、お水が体にかかることが苦手というワンちゃんは少なからずいます。特に、柴犬はそういう子が多いと思います。
ワンちゃんをお水に慣らすしつけのアプローチとしては
・子犬の頃からトリミングサロンなどの力を借りつつ、徐々に慣らしてあげる
・お水を完全に好きにさせることは難しいですが、我慢して受け入れることを教えてあげる
の2つのアプローチがあります。子犬の頃から徐々に慣らすのが簡単ですが、すでに成犬の場合は、まず、ワンちゃんの気持ちを考えてあげるようにしましょう。
まず、シャワーなどで水が勢いよく肌にかかると「刺さるような感じ」がして、苦手というワンちゃんがいます。
その後のブラッシングも、ブラシが肌に付く感覚がいやという子がいます。体を乾かすドライヤーはすごく大きな音がするうえに、風が吹き寄せるので苦手という子もいます。

反応しないくらいの小さなことから少しずつ慣らしていくのが基本です

お水が苦手なワンちゃんの場合は、「ワンちゃんにとってはいやなことかもしれないけれど、我慢して受け入れてもらいたい」という気持ちを大切にしましょう。
まずは、「お風呂のあとのこと」に少しずつ慣れさせます。つまり、ブラッシングやドライヤーです。2人一組になって行うのが理想ですが、ワンちゃんのリードをどこかに固定してもかまいません。
ブラシをワンちゃんから見える位置に置いて、ワンちゃんがブラシを見たら「いいこ!」と思いっきりほめて、おやつをあげます。実際にブラッシングをするのは、ワンちゃんがブラシを見たらいいことがあると覚えてからです。このように、「ワンちゃんが存在を認識するくらいの、反応しない程度の小さなこと」から始めて、少しずつ慣らして刺激の度合いを上げていくことを「脱感作」といいます。

ブラシを見るといいことがあるとワンちゃんに教えてあげます。

おやつを食べたら、いいこ!とよくほめてあげてください。
ワンちゃんがブラッシングを嫌う場合は、1週間ほどこれだけを繰り返して、「ブラシは怖くない」「ブラシを見ると自分にとっていいことがある」と教えていきます。

ブラシを見ることに慣れてきたら、その次の段階にうつります。

いい子、とほめながら、毛にブラシを当てます。このとき、はじめはブラッシングはせずに、ただ当てるだけにしてください。

腰回りなど、ワンちゃんが嫌がらないところからブラシを当てていきます。

ワンちゃんが嫌がらなくなってきたら、少しブラシを動かしてブラッシングの真似事をします。

ブラッシングになれてきたら、お顔周りにもブラシを当ててみます。お顔周りは、ワンちゃんの敏感な部分のひとつです。始めのうちはひとりがおやつで気を引きながらブラシをあて、あてさせてくれたら「いいこ!」と思いっきりほめておやつをあげてください。

お顔にブラシを当てさせてくれたら、次はしっぽです。ここも、ワンちゃんの敏感な部分のひとつなので、同じようにひとりがおやつで気を引きながらブラシをあて、あてさせてくれたら「いいこ!」とほめておやつをあげる作戦でいきましょう。

ブラッシングになれてきたら、耳にもブラシを当てる真似から始めてください。

だいぶブラッシングにも慣れてきて、ワンちゃんの敏感な部分の足もほら、このとおり!気持ちよくブラシを当てさせてくれました。

ブラシを当てることに慣れたら、次はドライヤーです。ドライヤーは大きな音が鳴るうえに、風が勢いよく吹き出します。まずは、ドライヤーを見ることから始めます。

コンセントを入れない状態のドライヤーを、ワンちゃんの前に置きます。ワンちゃんがドライヤーの匂いを嗅いだら大げさなくらいいい子!と褒めて、おやつをあげてください。

ドライヤーの存在をワンちゃんが受け入れてくれたら、おやつをあげながら、冷風を出して風を当ててみます。体を乾かすわけではないので、冷風でかまいません。音と風の刺激に少しずつ慣らしましょう。

クシを使う場合は、同じように見たらおやつをあげていい子!と褒めることを基本に慣らしていきます。

クシを通しても笑顔で応じてくれるようになりました。

大切なのは、ここまですべてをいっぺんにやろうとしないことです。DOGLYでは、ワンちゃんによっては1カ月かけて「お風呂の前後のこと」に慣らすケースもあります。
極端にブラッシングやクシ、ドライヤーを嫌がるワンちゃんは、「見たらおやつをあげる」を繰り返してください。実際にブラッシングやクシを通したり、ドライヤーから冷風を出したりするのは、ワンちゃんがその存在を受け入れてくれた後です。

お風呂はワンちゃんの健康にとてもいいものです。ぜひ、日常生活に取り入れてみてくださいね。

ー おすすめ記事 ー

ー おすすめ商品 ー