【検証】車内と地面、室内温度を計測! 健康

【獣医師監修】ペットの周囲は超熱い! 熱中症の危険性

春先から初秋まで、ワンちゃんに多いのが「熱中症」。
命の危険もある熱中症にさせないためには、どうしたらいいでしょう。
CaFelier(キャフェリエ)の小林充子院長から伺った熱中症対策と、家に潜む危険をご紹介します。
温度計を使ってワンちゃんと生活する場所の温度を計測してみたところ、意外な場所に危険があることがわかりました!

小林充子先生

獣医師、CaFelier(東京都目黒区)院長。麻布大学獣医学部在学中、国立保険医療科学院(旧国立公衆衛生院)のウイルス研究室でSRSV(小型球形ウイルス)の研究を行なう。2002年獣医師免許取得後、動物病院勤務、ASC(アニマルスペシャリストセンター:皮膚科2次診療施設)研修を経て、2010年に目黒区駒場にクリニック・トリミング・ペットホテル・ショップの複合施設であるCaFelierを開業。地域のホームドクターとして統合診療を行う。

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ペットの「熱中症」は何が原因なのでしょう?

犬に多い「熱中症」。室内でも発生する原因とは?

熱中症とは、体温が上がり、体内の水分や塩分のバランスが崩れたり、体温の調節機能が働かくなったりして、さまざまな症状を起こし場合によっては死に至る症状のことをいいます。
「汗腺にはエクリン汗腺、アポクリン汗腺の2種類があり、水分を蒸発させて体温調節に関与するのはエクリン汗腺です。しかし、ワンちゃんはエクリン汗腺が発達していないので、人よりも熱が体にこもりやすく、熱中症になりやすいといえます」(CaFelier院長・小林充子先生)

ワンちゃんはお留守番のときにサークルなどでお留守番させることが多いですが、サークルまわりの温度が上がってしまうと涼しい場所に逃げられません。
サークルを置く場所には気を付けるようにしましょう。
これに対して、もともと砂漠地方にルーツを持つ猫ちゃんは基本的には暑さに強い動物です。

また、ワンちゃんとは違って高いところ、低いところと自在に動けるので、その時々に合わせて自分にとっての快適な温度を探すのが上手です。
ゼロではありませんが、猫は犬よりも熱中症になりにくいといえます。

猫はその場所が暑いと思ったら下の涼しい場所に移動できます。

日中の室温、クーラーを付けないとどれくらいになる?

今回は、晴れた日のリビングで室内の温度を計測しました。
晴れた日、カーテンの隙間などから床に日光が当たっていると、そこから気温が上昇することがわかりました。

午前中は室内の温度が26℃、午後は32.3℃まで上がり、防犯のために窓を閉めると外気温よりも温度があがることがわかりました。

ペットをお留守番させる場合は、クーラーの温度を27~28℃程度に設定するとよいでしょう。
「フレンチ・ブルドッグ(フレブル)など、鼻ぺちゃ(短頭種)で暑がりの犬種はもう少し温度を下げることをおすすめします。
その設定温度でパンディング(舌を出してハアハアと呼吸をすること)を激しくするようなら、もう少し下げることをおすすめします」(小林充子先生)

この写真のように、パンディングをするようなら少し温度設定を下げてみましょう。

たっぷりの水を置いていきましょう

小林先生によると、意外と多いのが水分不足による熱中症とのことです。
ファウンテンタイプの水飲みなどを取り入れ、ワンちゃん、猫ちゃんがいつでもお水をたくさん飲めるようにしておきましょう。
気付くと水入れに水が入っていない、という状態がかなり危険とのことです。
「もし、普段からあまり水を飲まないタイプの子であれば、嗜好性のいいワンちゃん用の清涼飲料水も販売されています。
お水に少し味(甘みや出汁など)をつけるというのもいいと思いますので、喜んで水分を取れる工夫をしてみましょう」(小林先生)

扇風機も活用しましょう

体感温度を下げてくれる扇風機は、ワンちゃん、猫ちゃんにとっても有用です。
首振り機能を活用し、ときどき風がワンちゃん、猫ちゃんに当たるようにするとよいでしょう。
「ただし、直接風が当たることを嫌がる子もいます(特に猫ちゃん)ので、その場合は部屋の空気を撹拌する目的で使ってあげましょう」(小林先生)

扇風機の首振り機能を活用しましょう。

「暖かい場所」「冷たい場所」を用意しましょう

アルミマットなどが市販されています。もっとも、過信は禁物です。
表面温度を計ったところ、アルミマットよりもフローリングのほうが冷たいことがわかりました。

アルミマットの表面温度は31.3℃です。

アルミマットのすぐ横のフローリングの表面温度は、30.9℃でした。

触ってみるとひんやりと冷たく、気持ちがいいです。
なぜ、表面温度は高いのに冷たく感じるのでしょう?
それは「アルミマットの熱伝導率が高いから」。
熱は、温度の低い方へ移動する性質があります。
アルミマットに触ると手の熱が瞬時にマットに移動するから冷たく感じるだけで、実際の温度は低くありません。
アルミマットの過信は禁物です。
夏は、クーラーと扇風機で適度な室温を保つことが大切です。

「今日は涼しい」。でも、車は特に注意しましょう!

熱中症で多いのが「車内放置」によるものです

「今日は割と涼しいから、窓をちょっと開けて買い物に行ってこよう」
と、ドッグランの帰りなどにワンちゃんを車でお留守番させるのはとても危険です。

外気温27℃の日に、日向に車を止めてエンジンを切りました。3分でダッシュボードは46.3℃に上昇しました!

後部座席は34.9℃になっていました!
外気温が30℃を超えた晴天の場合、ダッシュボードは60℃以上にもなります。車内にワンちゃんや猫ちゃんを放置して外出するのは厳禁です。

旅行時のクレートの置き場所にも注意です

車で旅行するとき、クレートに入れたワンちゃんを荷室スペースに乗せることがあります。
筆者もときどきやっていたのですが、今回、運転中の荷室スペースに置いたクレート内の温度を計測したところ、クーラーを24℃設定にしていてもクレート内の温度は32℃まで上がりました。
ハッチから入る日差しがクレートをあたためてしまったためと考えられます。

ワンちゃんや猫ちゃんを車に乗せて移動する場合、クレートは直射日光が当たらず、クーラーの空気が間接的に当たるところに置いて、まめに様子を見るようにしましょう。
クーラーの空気が直接当たってしまうと冷えすぎる可能性があるので、後部座席がおすすめです。
また、クレートは熱がこもりやすいので、市販されているワンちゃん用のシートベルトを使うのもおすすめです。

ワンちゃん用のシートベルトも市販されています。

夏場のお散歩は特に注意しましょう

朝、昼、晩。アスファルトは何度になる?

実際に計測したところ、朝のアスファルトは22℃、昼はなんと41℃まで上がりました。
また、夜7時に計っても30℃のままの日もありました。真夏日はもっと上がると考えられます。
夏場のお散歩は早朝と、夜9時過ぎがおすすめです。お昼間の散歩は控えましょう。

アスファルトの温度は意外と高いので、夏場は触って熱くないかを確かめてから散歩するといいでしょう。

ダックスフンドやフレブルなど、熱中症リスクが高いワンちゃんもいます

ダックスフンドなど、地面にお腹が近いワンちゃんは熱中症のリスクが高いです。
また、フレブル、ブルドッグ、シー・ズーなどの短頭種は咽頭気道が狭く、パンディングで熱を発散して体温を下げることが苦手なので熱中症になりやすいワンちゃんです。
肥満気味のワンちゃんはもともと呼吸器や心臓に負担がかかっているうえ、体温が下がりにくいので、要注意です。
日が暮れていても、お散歩には十分に注意をしてください。

ダックスフンドは地面とお腹が近いので、地面が熱いと熱中症のリスクが上がります。

いくら芝生でも、ドッグランは控えめに&運動後のケアが大事

酷暑で外に出ることが少なくなる夏、芝生で運動させてあげたい!
と高原のドッグランに行くことがあります。涼しくても、直射日光が当たっている芝生は温度が上昇していることもあります。
また、運動によって体温はかなり上昇するので、しっかり水分を取り、運動後は水浴びなどをさせてあげましょう。
「豊富な運動量が必要なワンちゃんは、夏はワンちゃん用救命胴衣とリードを付けたうえでの水泳もおすすめです」(CaFelier院長 小林充子先生)。

必ず、救命胴衣とリードを付けて泳ぐようにしましょう。

高原などのドッグランで走らせてあげる場合は、気温とワンちゃんの体温、ワンちゃんの様子に特に注意しましょう。
レジャーの夏、熱中症に気を付けて、いい思い出をたくさん作りましょう!

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