昼間起こしておくことが大切です 健康

ワンチャンにも認知症があるのご存知ですか?

シニア期も後半になってくると、人間のお年寄りと同じように、認知症などがあらわれることがあります。飼い主様が介護に疲れ切ってしまう前に、早めに動物病院に相談をしましょう。今回は、小林充子先生にシニア後期のケアについて伺いました。

小林充子先生

獣医師、CaFelier(東京都目黒区)院長。麻布大学獣医学部在学中、国立保険医療科学院(旧国立公衆衛生院)のウイルス研究室でSRSV(小型球形ウイルス)の研究を行なう。2002年獣医師免許取得後、動物病院勤務、ASC(アニマルスペシャリストセンター:皮膚科2次診療施設)研修を経て、2010年に目黒区駒場にクリニック・トリミング・ペットホテル・ショップの複合施設であるCaFelierを開業。地域のホームドクターとして統合診療を行う。

この記事の内容をまとめると……

ワンちゃんにも「認知症」があります

認知症の症状の出方は、ワンちゃんによって違います。代表的な症状は、同じ方向にぐるぐると歩き回ったり、部屋の隅などに入り込んで後退ができず動けなくなったりすることです。
このような場合は、ワンちゃんの危険を避けるため、歩かせるスペースを決めてしまうといいでしょう。

市販されているメッシュ素材でできた丸形のサークルや、人間の子ども用の丸形ビニールプールの中にすべり止めのマットを敷いたものなどを使って、安全に歩き回れるスペースを作ってあげるのです。
ぐるぐる回り出したらそこに入れて、好きなだけ歩かせてあげましょう。

また、認知症のワンちゃんは薄暗いほうが安心することが多いので、室内の電気も少し落としてあげてください。
歩いている時間はまちまちですが、しばらくの間歩いていると、そのうち疲れてぐっすりと眠ってくれます。

夜鳴きは昼間起こしてあげることが対策のひとつです

認知症のワンちゃんの飼い主様は、ワンちゃんの夜鳴きに困っていらっしゃることが多いです。
夜中の2時から4時頃に、全身を振り絞って出せる限りの大きな声で吠えます。
その声が余りにも大きく、また一度始まると長時間に及ぶため、飼い主様は、ご自身はじめご家族みなさまが眠れなくなるだけでなく、近所迷惑になるのではないか、と悩んでいらっしゃいます。

対策として、お昼にワンちゃんが熟睡しているようならなるべく起こして、お天気のいいときは外に連れ出して、抱っこしたまま歩いたり、軽くお散歩したりすることをおすすめしています。
外にはたくさんのニオイや音があり、また風を受けたり日光に当たったりすることなどで五感が刺激され、ワンちゃんの脳が活性化します。
昼間に活動することで、狂ってしまった体内時計をできるだけ元に戻し、夜寝るべき時間に眠れるようにしてあげましょう。

どうしてもお困りのときは、動物病院に相談をして、鎮静剤などを処方してもらう方法もあります。
ワンちゃんの介護は、本当に大変です。飼い主様が夜、ぐっすり安眠できることはとても大切です。
飼い主様が眠れない状態が長く続く前に、ワンちゃんへの投薬などで対処した方がお互いのためにもいいと私は考えています。

オムツは補助的に使うことをおすすめします

ワンちゃんが排尿・排便をトイレでできなくなったときのため、ワンちゃん用のオムツが市販されています。
もっとも、オムツをずっとしていると、陰部がムレたりして感染を起こし、皮膚が赤くなったり、細菌性膀胱炎になったりすることもあります。
日中、飼い主様が在宅のときはオムツを外してあげて、トイレや屋外での排尿を促してあげてください。
オムツは、夜寝るときや留守番のときなど、補助的に使うことをおすすめします。

寝たきりになったときは褥瘡(じょくそう)の予防に気を配りましょう

ワンちゃんが寝たきりになったときは、褥瘡(いわゆる床ズレ)ができないよう、市販されているワンちゃん用の褥瘡予防クッションなどを上手に使い、また一定時間が経ったら寝返りをうたせてあげましょう。

また、寝たきりのワンちゃんは、代謝が落ちることで体温が下がってきます。
37.5~38℃程度がワンちゃんの平熱ですが、寝たきりになると37~37.5℃くらいになることもあります。
足先が冷たくなるなど、血流が悪くなって血栓などができやすくなります。

ワンちゃんの血圧を上げる受容体はパッド(肉球)にもあります。
寝た状態になると受容体が刺激されなくなり、血流が悪くなってしまうのです。
足先をぐるぐる動かしてあげたり、パッドをぎゅっとつまんでマッサージしてあげたりして、血流をよくしてあげましょう。
お散歩しているのと同じような状態を作ってあげることで、血流がよくなります。

ワンチャンの介護をする飼い主様が、ダウンしないようにシニアドックと向き合い、その犬生を見守っていきたいですね。

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