肥満は百害あって一利なし 健康

【獣医師監修】半年で体重10%減を目指してダイエットしましょう

いよいよ食欲の秋が到来です。涼しく、過ごしやすくなる秋は私たちだけではなく、猫ちゃん、ワンちゃんの体重増加にも注意が必要です。
多少の肉付きのよさは愛嬌のうちですが、「肥満」になるとペットの体には様々な異変が生じてしまいます。
増えすぎた体重を健康的にダイエットするためのコツを小林充子先生に伺いました。

小林充子先生

獣医師、CaFelier(東京都目黒区)院長。麻布大学獣医学部在学中、国立保険医療科学院(旧国立公衆衛生院)のウイルス研究室でSRSV(小型球形ウイルス)の研究を行なう。2002年獣医師免許取得後、動物病院勤務、ASC(アニマルスペシャリストセンター:皮膚科2次診療施設)研修を経て、2010年に目黒区駒場にクリニック・トリミング・ペットホテル・ショップの複合施設であるCaFelierを開業。地域のホームドクターとして統合診療を行う。

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ワンちゃん、猫ちゃんの肥満はいいことがひとつもありません

ワンちゃん、猫ちゃんが肥満になると、酸素や栄養分をよりたくさん遠くまで運ばなければならなくなり、それに伴って循環する血液の量が増えます。
そのため心拍数が増えて血圧も上がるため、心臓にかなりの負担となります。

また、トイ・プードルなどのトイ犬種は生まれながらに膝蓋骨脱臼の素因をもっている子、また、ミニチュア・ダックスフンドなどは椎間板ヘルニアの素因がある子が多いです。
体重が増えれば、膝蓋骨脱臼や椎間板ヘルニアが発症したり、悪化したりする可能性が高いです。
猫ちゃんの場合、肥満は糖尿病の一番の原因となります。

また、猫ちゃんは加齢とともに変形性関節炎を起こしやすくなりますが、肥満は、その発症を早めたりや悪化させる原因となります。
さらに、ワンちゃん、猫ちゃんともに、皮下脂肪が多いと脂肪腫ができやすくなります。
多くは良性の脂肪腫ですが、ごくまれに悪性の脂肪腫(脂肪肉腫)に変化したり、脂肪腫と思っていたけれども実は違う腫瘍だったりということがあることもあります。

太りやすく、またできものができやすいタイプの子は注意しましょう。
特に、フレンチ・ブルドッグやイングリッシュ・ブルドッグ、シー・ズー、パグなどの短頭犬種(鼻ペチャ犬)は気管まわり、首まわりに脂肪が付くことで気管が圧迫され、呼吸器に大きな負担がかかることがあります。
遊んで興奮したり、走ってチアノーゼを起こしてしまったりすることもあります。
肥満は高脂血症の原因ともなりますし、ワンちゃん、猫ちゃんが太っていて健康にいいことはひとつもないと言っていいでしょう。

肥満の原因はカロリーの摂りすぎと運動不足です

ワンちゃん、猫ちゃんが太る仕組みは、人と同じです。
すなわち、摂取カロリーよりも消費カロリーのほうが低いと余剰分のカロリーが皮下脂肪となって蓄えられ、太っていきます。
ワンちゃん、猫ちゃんへのご飯やおやつのあげすぎ、運動不足が肥満の大きな原因です。

また、甲状腺や副腎皮質、膵臓などに、ホルモンバランスを崩すような疾患をもっていると肥満になることがあります。
治療の一貫でステロイド剤などを投与されている場合も太りやすくなることがありますので、かかりつけの獣医師と相談をしながら、太りすぎないような食生活を心がけましょう。
ワンちゃん、猫ちゃんが不妊去勢手術をしている場合、ホルモンバランスが変わることで代謝が落ち、結果として皮下脂肪が付きやすくなります。摂取カロリーに気を配るようにしましょう。

体重だけではわからない! ワンちゃん、猫ちゃんの体はどうなると「肥満」?

ワンちゃん、猫ちゃんは、体重と、腹部周り、首周りから胸の皮下脂肪の付き方で肥満かどうかを判断します。
体重は、満1歳のときの体重と比べて、激しく増えているようでしたら肥満を疑います。

皮下脂肪は、抱っこするときに前足の間に手を入れて、胸のあたりを触ってみてください。
胸は肋骨があるので、肋骨の上の皮下脂肪の付き具合を判断しやすいです。
肋骨に触れるようであれば、肥満ではありません。

触ってみて、肋骨の存在を感じられないようでしたら要注意です。
また、ワンちゃん、猫ちゃんを上から見て、ウエストのくびれがない場合も、肥満の疑いがあります。

半年で10%減が健康なダイエットとしてオススメです!

ワンちゃん、猫ちゃんともに、健康なダイエットの王道は人間と同じです。
すなわち、「摂取カロリーを減らして運動量を増やす」ことを心がけましょう。
とはいえ、急激に食事量を減らしたり、運動量を増やしたりすることはストレスの原因となります。
まずは、無理なく摂取カロリーを減らしていくようにしましょう。

6カ月で今の体重の10%を減量するくらいの、ゆっくりペースでのダイエットがオススメです。
例えば、6kgのワンちゃんでしたら、6カ月で600g。1カ月で100g痩せるくらいのゆっくりペースです。
まずは、かかりつけの獣医師と相談のうえ、フードをダイエットタイプ、すなわち100gあたりのkcalの数値が低いものに切り替えていってください。

ダイエットタイプのドッグフードが市販されています。

ダイエットタイプのキャットフードもあります。

ダイエット用ですと、100gあたり320kcal程度のものも販売されています。

このドッグフードは100gあたりのカロリーが314kcalです。

このキャットフードは、100gあたりのカロリーが326kcalです。

大切なのは、今、与えているフードよりも低カロリーのフードに切り替えることです。
これで、食事量を変えずに摂取カロリーだけを低くすることができます。
食べている量は同じなのにダイエットができるので、ワンちゃん、猫ちゃんもストレスを感じにくいです。

また、フードは必ず、計量してから与えるようにしましょう。ペットがどれだけのカロリーを摂っているのかを把握することが大切です。

先ほどのキャットフードは体重3kgの猫ちゃんの場合体重管理用の推奨給与量が1日40gとのことでしたので、1日分の40gを計量しました。

運動量は、ワンちゃんの場合はいつものお散歩を少し長めにする、猫ちゃんの場合はたくさんかまって遊んであげる程度で十分です。

最大の難関は「甘い家族」とおやつです

「せっかくダイエットタイプのフードに切り替えたのに、パパやおばあちゃんがこっそりおやつをあげていてダイエットできなかった」というのは、ペットのダイエット失敗あるあるです。
ワンちゃん、猫ちゃんにダイエットをさせることを決めたら、人の食事を分けてあげたり、みだりにおやつをあげたりしないよう家族で徹底しましょう。
1日の摂取カロリー量を決めたら、1日分のフードをチャック付きのビニール袋などにとりわけ、そこからフードを「おやつ」として与えるのもオススメです。

先ほどのキャットフードは体重3kgの猫ちゃんの場合体重管理用の推奨給与量が1日40gとのことでしたので、1日分の40gを計量しました。

1日分の給与量を、チャック付きのビニール袋にとりわけます。今日、ワンちゃんにあげるのは、この袋の中にあるフードだけというように徹底します。フードをおやつ代わりに与えます。

また、おやつをあげるときは低カロリータイプのものを選び、あげる量を決めて1日分をチャック付きのビニール袋などにとりわけ、そこから与えるようにしましょう。「ビニール袋が空になったらそれ以上あげない」ことを徹底するだけで、無理なくダイエットができます。