春から秋にかけて大発生する「蚊」はペットだけでなく、私たち人間も悩ませる存在です。動物が吐き出す二酸化炭素やにおいは蚊を誘引しますが、体温や色も誘引性に関係すると言われています。
そして、なぜメスの蚊が血を吸うのかといえば、産卵のために動物の血液に含まれる栄養分が必要だからです。なお、チカイエカのように、血を吸わなくても最初の産卵ができる蚊もいます。
春から秋にかけて大発生する「蚊」はペットだけでなく、私たち人間も悩ませる存在です。動物が吐き出す二酸化炭素やにおいは蚊を誘引しますが、体温や色も誘引性に関係すると言われています。
そして、なぜメスの蚊が血を吸うのかといえば、産卵のために動物の血液に含まれる栄養分が必要だからです。なお、チカイエカのように、血を吸わなくても最初の産卵ができる蚊もいます。
ヤブカの一種の「ネッタイシマカ」は熱帯・亜熱帯地域に分布し、野口英世の研究で有名な黄熱などを媒介します。黄熱はかつてアフリカや南米で猛威を振るっていましたが、現在では予防接種をしておけば生涯有効です。イエカの一種の「ネッタイイエカ」も熱帯・亜熱帯地域に広く分布し、人の糸状虫症(フィラリア症)を媒介します。「ハマダラカ」の仲間は世界中に広く分布し、アフリカや南米、アジアの熱帯地域などでマラリアを媒介する蚊として知られています。マラリアに感染すると、発熱や寒気、頭痛、嘔吐などの症状がでて合併症を引き起こし、最悪の場合は死に至ることも…。日本でも明治から昭和初期にかけて、全国でマラリアが流行したこともありますが、現在ではマラリアのリスクがある地域からは外れています。
日本で見かける代表的な蚊は「アカイエカ」「チカイエカ」「ヒトスジシマカ」ですが、豚嗜好性の高いコガタアカイエカや大型哺乳類から盛んに吸血するシナハマダラカ、海岸線の塩分濃度の高い水域から発生する「トウゴウヤブカ」などもいます。数年前、都内の公園でヒトスジシマカが媒介するデング熱が流行しました。デング熱はウイルスを持った人から蚊が吸血し、その蚊が別の人を刺すことによって感染しますが、発症すると激しい頭痛や筋肉痛、関節痛に見舞われます。死に至るケースは稀ですが、重症化すると血小板が減少して出血を起こしたりします。地球上で最も多くの人を殺す生き物は「蚊」だと言われていますが、蚊による感染症のリスクは世界的な問題となっているので、少し蚊のことを知っておきましょう。
蚊の吸血意欲は明るさ(照度)に影響され、概してヤブカ類は昼行性、イエカ類やハマダラカ類は夜行性です。蚊の種類によって吸血ピークは異なりますが、蚊に刺されやすい時間帯は、概ね朝方と夕方。これはペットがお散歩する時間と重なるので注意が必要です。
ペットが蚊に刺されて問題となるのは、血を吸われるだけでなく、さまざまな感染症を引き起こすことです。代表的なのが“イヌ糸状虫症(イヌフィラリア症)”で、蚊が吸血する時にミクロフィラリア(幼虫)が体内に入ることによって感染します。体内に入ったイヌ糸状虫は、最終的には肺動脈や心臓に移動し、成熟して成虫となったイヌ糸状虫は幼虫を産みますが、幼虫は血流にのりペットの全身を巡っています。寄生した成虫は心機能低下を起こしたり、肺動脈に詰まり、肝臓や腎臓に影響を与えます。軽症では軽く咳をする程度ですが、重症化すると食欲が失せ、呼吸困難になったり、腹水が溜まったり、失神してしまうこともあり、このような状態が続くと死亡してしまうこともあるのです。蚊は吸血するだけでなく、感染症を引き起こすということも覚えておきましょう。余談ですが、犬好きで知られる西郷隆盛は、蚊が媒介するフィラリア症にかかり、陰嚢が大きく膨れ上がってしまったそうです。
蚊の駆除や蚊よけに効果的なのは、ピレスロイド系の有効成分です。「ピレスロイド」とは、キク科の植物に含まれ、殺虫効果を示す天然成分によく似た物質を化学的に合成したもので、哺乳類や鳥類に対し高い安全性を示します。
ピレスロイド系の一種のフェノトリンは、人用のシラミとりシャンプーにも使われています。ピレスロイドは末梢神経や中枢神経に作用して異常な電位を生じさせ、神経の正常な情報伝達を阻害します。そのため、蚊がピレスロイドに触れると興奮状態に陥り、効果が強くあらわれると致死します。蚊にしてみれば、電気が走ったような感覚になり、飛び去っていくのでしょう。